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【初心者向け】印象派をゼロから解説

Soleil_levant_Claude_Monet

昨今、美術館の企画展で注目させる印象派。印象派は「絵のルールを書き換えた」ムーブメントです。しかし、正直何をもって印象派なのか、そもそも定義はあるのかなど、いまいちよく分からない人も多いのではないでしょうか。
ここでは、印象派の成り立ちから、どういった作品が印象派に含まれるのか、美術館での楽しい方まで幅広くを解説していきます。
読み終わるころには「なんとなく」から「はっきりと」印象派への理解が深まり、展覧会など美術館を一層楽しめるようになるはずです。

目次

1. 印象派って何?──簡単に言うと

印象派は19世紀末のヨーロッパ(主にパリ周辺)で起きた美術の潮流で、「見えたまま」を重視したことが特徴です。伝統的なアカデミック絵画が物語や歴史的題材に忠実であるのに対し、印象派は日常の光景や一瞬の印象、自然光の移ろいを題材に選びました。よく言われるのは「光と色の研究」で、同じ場面でも時間帯や天候で見え方が変わることに注目しました。

語源的にはある作品のタイトル《印象、日の出(Impression, soleil levant)》(1872年)が批評で皮肉まじりに使われ、それが「印象派(Impressionists)」という呼び名につながった、というエピソードが有名です。つまり「一瞬の印象」を描き出すこと自体がアイデンティティの一つになっています。

Claude Monet, Impression, soleil levant (1872).
画像出典:Wikimedia Commons
Claude Monet, Impression, soleil levant (1872).
Public Domain.

2. 技法と表現のポイント

Pierre-Auguste Renoir, Bal du Moulin de la Galette(ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会), 1876.
画像出典:Wikimedia Commons
Pierre-Auguste Renoir, Bal du Moulin de la Galette(ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会), 1876.
Public Domain

印象派を理解するために押さえたい要素は次の4つです。上のルノワールの作品《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会(Bal du Moulin de la Galette)》(1876年)を参考にポイントを見ていきましょう。

光と色

影は黒で塗るのではなく、周囲の色の混色で表現します。補色関係を利用して明暗や反射を表現することが多いです。 作品左側、「薄いピンク」のドレスを着た女性の影は補色に近い「薄い青色」で表現されています。

筆致(筆触)

短く切ったような筆の跡(broken brushwork)や、滑らかな塗りを場面によって使い分けます。筆触は情報の一つとして見てください。作中の人物の輪郭に注目すると、明確な輪郭線は描かれていないのが分かります。

描写の簡略化

遠景や細部を細かく描かず、大局的な色と形で「印象」を伝えます。この作品では全体的にふんわりとした暖かな空気感が感じられます。また、奥行きも表現はされていますが、人の表情などは読み取れません。

画面構成の新しさ

写真の影響や日本の浮世絵の影響で、切り取りや斜めの構図、画面端の強調が登場しました。作品中央の椅子の背もたれにもたれかかって会話をする女性。彼女も正面ではなく、斜めの視点から描かれているのが分かります。

これらは「技術」でもあり、作品を理解する上での手がかりでもあります。絵の中で何が重要か(光なのか、人影なのか、色の対比なのか)を見極めると、印象派が狙った効果が見えてきます。

3. 戸外(plein air)だけじゃない:室内と都市の印象派

印象派=戸外で明るく描かれた風景、というイメージは強いですが、実際には室内や都市の光景を描いた名作も多くあります。劇場の舞台裏やバレエの稽古場、カフェ、社交場、家庭のリビングなど、人の生活に密着した室内画は、印象派の重要な側面です。

たとえばカフェやダンスホールの賑わい、窓辺の静かな光など、室内は光のコントラストや人工光(ろうそく、ランプ、窓からの自然光)を観察するのに絶好の舞台でした。こうした室内作品は、光と色の扱いが戸外の風景とは異なり、より凝縮されたドラマを持つことがあります。

下の作品はエドガー・ドガの代表作《Ballet (L’Étoile)》(1876年)です。
室内照明、特に舞台照明ならではの青白く滑らかな肌の照り返しは、会場の少しひんやりと緊張感を帯びた雰囲気が表現されているように感じられるのではないでしょうか。

Edgar Degas, Ballet (L'Étoile), 1876.
画像出典:Wikimedia Commons
Edgar Degas, Ballet (L’Étoile), 1876.
Public Domain


4. 「筆触の残る絵」だけが印象派じゃない理由

印象派によくある誤解は「印象派=荒い筆致で絵の具がベタベタ、必ず筆触が残る」というもの。確かに短い筆致や点描風の技法は印象派でよく見られますが、すべての印象派の絵画に当てはまるわけではありません。アーティストや時期、題材によって筆致は多様です。

最初にも紹介した通り、印象派は、光や色の新しい表現を追求する中で、結果として既存の制度に対する挑戦となった芸術運動です。印象派の画家は、一瞬の『印象』をそれぞれの技法で表現しようとしました。
つまり印象派といっても、絵画を学んだ場所、師事していた人物は皆それぞれで、表現技法にはある程度の幅があるということです。

5. 美術館での具体的な見方・楽しみ方

ここまで、印象派に関して解説してきましたが少しは理解が深まったのでは無いでしょうか?

ここでは実際に美術館に行った際の印象派の作品をより楽しむ上でおすすめの見方・楽しみ方を5つご紹介します。正しい見方というものはありませんが、より深く理解する上で参考にしてみてください。

  1. 一通り観てお気に入りを探す:展覧会は入り口付近や目玉の作品が特に混雑します。列に沿ってゆっくり観ていくと、終盤疲れてしまってしっかり観ることができないことがあります。最初に少し離れたところから,ざっと観て周りお気に入りを見つけ、空いたタイミングでじっくりと観察するのがおすすめです。
  2. まずは距離を取って見る:遠目で色の関係や光の印象を感じ取り、近づいて筆致や絵の具の使い方を観察する二段階で見ると理解が深まります。
  3. 写真と比べてみる:これは少し上級者向けですが、同じ構図を写真に撮ってみると、画家が何を強調したかったかが見えてきます。
  4. 時間帯を想像する:朝?夕方?光の色や影の向きから時間を想像すると、絵の中の空気感が膨らみます。
  5. 好きな要素をメモする:色、光、構図、人物の表情、筆触など、気になった要素をメモしておくと自分の好みがわかります。

6.まとめ

印象派は知れば知るほど「自由で、実験的で、現代的な描き方をした人たち」だと気づきます。美術史の中では150年前の運動ですが、今見ても色褪せないのは、彼らが“世界の見え方そのもの”に真正面から向き合ったからです。

この記事で印象派が少しクリアに見えたなら、次に美術館へ行くときは、ぜひ光や色の“揺らぎ”に注目してみてください。作品の前に立ったときの楽しさがぐっと増すはずです。

そして、理解が深まった今こそ、開催中の展覧会で“実物”を体験してみませんか?
現在公開中の 「オルセー美術館所蔵 印象派-室内をめぐる物語」では、ここで紹介した光の表現や筆致の工夫を、実際の作品を通してじっくり味わうことができます。

気になる方は、展覧会レビューもあわせてどうぞ。

少し知識を持って観るだけで、同じ展覧会でも見える世界は大きく変わります。ぜひこの機会に足を運んでみてください。

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